【書評】住まいの解剖図鑑(増田 奏)


【著者紹介】
増田 奏(ますだ すすむ)
1951年横浜市生まれ、一級建築士、関東学院大学人間環境学部客員教授、横浜の建築がグループ「area 045」会員。
1977年早稲田大学大学院修士課程修了。同年より9年間「住宅設計の第一人者」故吉村順三氏の設計事務所に勤務。86年に独立し、横浜市に建築設計事務社SMAを設立。

【書評】
『まず、お断りしておかねければなりません』本書は著者は違うもののシリーズ物として表紙、題名が付けられている他の2冊よりもアマゾンでの評価が高いものの、私個人の意見としては他の2冊、特に「間取りの方程式」の方が断然面白い本と言えると思ってしまいました。「はじめに」にある通り、そもそもは「住宅設計を学ぶ建築系の学生たち」に向けて書き始められたものが、「設計のプロとして実務を始めたばかりの若い人たち」もターゲットになり、最終的に「これから自宅を建てようとする一般の人」までも対象としたことで「それぞれの立場で過不足を感じる部分もあろうかと思います。そこは寛容にご理解いただくとして」とあるが、言い訳を先にしておけば何でも許されるというものではないと思う。ただし、シリーズの他の本と比較せずにひとつの本として感想を述べるのであればかなり面白い部類に入ります。さらに、すごいなと思ったのは文章だけでなく絵までもが著者によるものだというところです。

【抜粋/まとめ】
■住宅の設計はお弁当づくりに似ている
弁当箱の素材、用途、二段重ねなのか平なのか、とうは随分と住宅の姿かたちと似ています。弁当箱の中身は住宅の中身、間取りと似ています。どんな中身を入れるのか、どのように仕切る(間取り)のか。

■下駄箱はタタキのどこへ置くべきか
ホールに下駄箱をおけば、靴をしまうときに汚れがつきそうです。タタキに下駄箱をおけばホールの中まで汚されずに済む代わりに、タタキに一歩降りなければ履物を取り出せません。玄関スペースに余裕があればホールとタタキをまたいで下駄箱を作るのもありですが、全てにおいて一長一短でみんなに当てはまる正解はありません。

■階段を笑うものは階段に泣く
階段は場所、向きを変えるだけで各部屋をつなぐ廊下の長さに違いが出ます。廊下の長さはそのまま部屋のサイズに影響を与えます。廊下は短いほうがいいのです。階段と廊下はセットで考えて、中央に位置するほうが基本的には正解です。

■冷蔵庫は奥か、手前か
コンロを手前に置くことでアツアツの料理を無駄なく提供できます。ただしその奥に冷蔵庫があればコンロと流しと配膳台の前を通り過ぎていく人たちがいます。冷蔵庫を手前に置くと、みんながキッチンに入らず冷蔵庫にアクセスできます。これもどちらも一長一短で、もしキッチンスペースが広く家族が積極的に料理に参加するのであれば左右からキッチンに入れるアイランド型ダブルアクセスが有効になります。しかし、コンロをとシンクを奥と手前のどちらに置くか、悩みはつきません。

■リビング階段か廊下で囲うか
廊下がなければ家族とのコミュニケーションが取りやすくなります。ただし、それがわずらわしく「廊下があって助かった」ということもあると思います。どちらがよいかではなく、どちらにするかです。