【書評】200万円でもできるM&A 百年企業を育てる最強のM&A活用術(萩原 直哉)


著者の荻原直哉は1968年東京都生まれ。
中小・零細企業を専門としたM&Aアドバイザー。
大学を卒業後は機械の専門商社にて営業を経験後、2000年9月に帝国データバンク入社。調査部で活躍後は経営企画部を経て2005年にTDBフュージョン(現在は帝国データバンクアクシスにより吸収済み)を起ち上げ。
2009年に株式会社オプティアスを創業し、代表取締役に就任。
帝国データバンクでは調査部に所属し、調査員として延べ1500社を超える企業の経営者と面談した経験を活かした「中小企業経営者・オーナーの目線に立ったM&A」がモットー。従来、スポットの当たりづらかった小規模案件でも積極的に取り扱う姿勢を貫き、実践的M&Aの手法を活用して中小企業の様々な経営課題の解決に取り組んでいる。
また、オプティアスではM&A付随業務の他に、「ビジネスエンジニアリング業務」として「新規事業・開発支援業務」「海外展開(進出・撤退)支援業務」「事業再生支援業務」「事業活性化・拡大支援」も行っている。

株式会社オプティアス
http://optius.jp

全体的に文章は軽快で堅苦しさが無い。悪く言えば信頼性が低いように捉える人もいるかもしれない。実は私自身も最初はあまり読む気になれない文章だったが、いつの間にか引き込まれ「親戚の頭のいいおじさんがプライベートの場でいろいろ話を聞かせてくれた」ような読後感が残った。
実名での実例も多く、信憑性の裏付けになっている上に、「知人のM&Aコンサルタントの発言にイラっと来た」等のリアルな表現もあり面白い。本書のいたるところで、「普通のM&Aコンサルタントだったらここまで言い切れない、書けないだろうな」という内容が多く読んでいて楽しい。
昆虫や動物を使った比喩が多く、それがまた「親戚のおじさんに教えてもらっている感」を醸成しているのかもしれない。

ただ、「200万円でもできるM&A」という題名はいかがなものかと思う。確かにそういうエピソードも含まれており、看板に偽りがあるわけでもないのだが、この本の内容はもっと濃い。しかも、「百年企業を育てる・・・」という副題もピンとこない。題名を今風に変えるだけで売上が10倍ぐらいに伸びそうなぐらいの面白いM&Aの入門書。

■会社が売却される側の社員にはどのように伝えるべきか
わたしはM&Aを実行する際、必ず「譲渡会社の従業員へは『基本的に何も変わらない』と説明してください」とアドバイスするのだが、これは「従業員へのインパクトを最小限にとどめる」ことを狙いにしている。良く変わろうが、悪く変わろうが、従業員にとって「M&Aで変わる」というのは少なからず不安をあおりやすいので、最初は「変わらない」と伝えるのが一番安全なのである。

■調剤薬局業界のM&A
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従来からM&Aが活発な業種として「調剤薬局」がある。本書執筆時点で、同業界はアインファーマシーズ、日本調剤の2社が店舗数・売上高とも突出しているが、ともにM&Aによる店舗数の増加により規模と業界シェアを拡大してきた。病院に行って処方箋を受け取った後、病院の出口から一番近い調剤薬局をつい選んでしまうが、調剤薬局にとってはまさにこの立地がとても重要で、病院の出口から近いほど有利だ。そして、病院(クリニック)の規模で患者数も決まるので、一病院(クリニック)当たりの調剤薬局の数も概ね決まっていると言われており、より出口に近い場所に自社の調剤薬局を出せるかどうかが戦略上大きな意味を持つ。そのため、この「場所取り合戦」こそが業界のシェアを決めているのだ。つまり、好立地(出口にできるだけ近い場所)、そして薬や薬剤師の配置がしやすいエリアの店舗をM&Aにより複数押さえていくことで、シナジーが得られる仕組みとなっているのだ。

■上流業種や下流業種への多角化は要注意
上流業種や下流業種への進出を狙うM&Aには注意が必要である。例えば、商社が製造業に進出するケースはよく見かけるが、実際は失敗しているケースも多い。商社の場合、通常取扱口銭(マージン)で利益を得るが、仕入先であるメーカーまで取り込んでしまえばその部分の利益も自社に取り込むことができる。所謂「バリューチェ
ーン(価値連鎖)」の下流が上流を取り込む形のM&Aだが、商社からメーカー経験のない管理職を送り込む結果、モノ作りの現場と十分な統合効果が得られず、結果的に当初目論んでいた収益に結びつかなかったり、経営がうまく行かずに再度手放すというケースもあるようだ。

■倒産した会社を救う「再生型M&A」
倒産してしまった会社にはM&Aは通用するのだろうか、これがまた、通用するのだ。特に「民事再生法」や「会社更生法」と呼ばれる再建型倒産(変な言葉だが、要するに「借金全額はもう返せませんが、借金を大半チャラにできれば再建できます」と裁判所に申し出て、債権者がOKすると再建できるということ)の現場では「スポンサーによるM&A」という形でよく利用されている。この場合、スポンサーが倒産した会社の事業を一定金額で評価して、その事業(資産、従業員、得意先を含む一連の事業体)を買い取るスタイル(事業譲渡という)が一般的で、債権者にはそのスポンサーが支払った譲渡対価が分配される。はっきりとした東経はないが、通常、債権額の数%から20%程度と言われている。
債権者には申し訳ないが、対象会社の従業員や事業、そして取引先を守る(連鎖倒産を防ぐ)意味でも非常に社会的意義の大きいM&Aの形態と言えるだろう。

■社員が会社をM&Aする(MBOとEBO)
従業員が会社や事業を買い取ることを「EBO(エンプロイー・バイアウト)」と呼び、マネージャー(部門長)が会社や事業を買い取る「MBO(マネジメント・バイアウト)」の一形態で、中小企業のM&Aでもたまに見受けられる手法である。サラリーマンであっても、EBOの手法を使えば会社や事業を買い取ることができるが、通常は買い取るための資金が無いため実行が困難である。しかし、「ハゲタカ」で描かれた事業部門の買収のように、その会社や事業が魅力的でかなりの収益が見込め、かつ、会社が売却に同意している場合はどうかというと、実はお金の出してが存在する。それが所謂投資ファンドで、特にEBOやMBOへ投資するファンドは「MBOファンド」と呼ばれている。「ハゲタカ」に登場する「鷲津ファンド」もこのタイプで、自己資金が僅かでも、MBOファンドから資金提供を得ることで、数億円から数十億円、またはそれ以上のM&Aが可能となるのである。

■M&Aで海外への進出を狙う
内需の停滞が長引く中で、中小企業の海外展開もより活発化している。従前は安い労働力を求めて発展途上国へ進出する例が多かったが、最近では海外の成長市場を目指して自社製品を輸出したり、現地需要を見越して生産設備を作るケースもある。現時点ではあまり実績は多くないが、これからは需要の伸びを背景として、中小企業による海外企業のM&Aや出資が増加していく可能性がある。本書を執筆時点では急速に円安が進んでいるが、チャイナリスクを背景に、インドネシアやミャンマー、カンボジア、ベトナムといったアセアン諸国への投資は増加傾向にあり、それに伴う消費市場の拡大も見込まれるため、中小企業のビジネスチャンスも拡大している。本業を活かしたビジネスの海外展開や、日本ブランド製品の輸出、更には異業種でもリスクの限定的なスモールビジネスなど、いろいろなビジネスが考えられるが、現地で事業を始めるきっかけがないという場合には、現地企業をM&A(出資)して事業を始める方法もある。現地企業との合弁に抵抗感がある場合、例えばカンボジアのように、投資規制が比較的まだ少なく、100%外資企業の設立も認められている国もあるので、専門家に相談して具体的な検討をしてみるのもよいだろう。

■そのM&Aは本当に必要か
一旦M&Aをやろうと思うと「M&A」という言葉に惑わされてしまうのか、「何としてもM&Aを実行しなければいけない」というふうに、当初の目的はどこかへ行ってしまって、M&Aの実行そのものが目的化してしまうこともよくあるのだ。「結婚はするよりもわかれる方がより膨大なエネルギーを要する」とはわたしの知人の格言だが、M&Aも失敗した場合のダメージは計り知れないほど大きい。M&Aを上手に進めて成功させるためにも、まず初めに目的を明確にしておくことで、失敗するリスクを低減することができるのである。

■M&A検討段階で入手するべき資料
1.商業登記簿(履歴事項全部証明書)
2.定款(最新のもの)
3.過去3期分の税務申告書(付属明細含む)
4.会社案内(ホームページでも代用可能)
5.試算表
6.株主名簿
なお、不動産リストや許認可リスト、従業員の資格状況など、場合によっては他の資料が必要になることも有るので、その都度資料請求して提出してもらうが、あまりこまごまとした資料を何度も請求すると相手も大変なので、ある程度まとまった形で資料提供してもらうことが多い。これら検討の初期段階で提出してもらう資料を「インフォメーションパッケージ」と呼び、ファイル1冊分ぐらいが適当。

■DDの費用はどのくらいかかる?
ところでDDの費用はどのくらいかかるのだろうか?一般的に、現地調査の日数は2日に間から4日間程度であるが、膨大な量の会計資料、税務関連資料、法務関連資料のチェックをこの期間内に完了しなければならないので、通常は会計士や税理士数名(弁護士数名)でチームを組んで作業を行う。DDは現地作業だけではなく、現地で集めた資料の集計・分析と、その結果報告書作成にまで及ぶため、現地作業以外にも一週間からに驟雨間程度の日数を要する。このようにDD作業は結構な重労働で、作業負荷もかかるほか、調査内容や報告内容によってはそれなりの責任を負う必要があるため、費用としては会計DDで200万円から数百万円程度(規模の大きい会社の調査では、1000万円以上かかる場合もある)、法務DDでも100万円から数百万円程度はかかると思っておいた方が良いだろう。一見高く感じるかもしれないが、後々トラブルが発生した際の処理コストや労力を考えれば、事前にリスク回避できるメリットも非常に大きいのだ。

■DD後の現実
多くの場合、DDを実施した会計事務所や弁護士事務所から、DD実施後一週間程度で「調査報告書」の形でまとめた報告書と関連資料が届けられる。この報告書について、調査担当者から買収会社に対してDDの報告がなされるわけだが、中小企業のM&Aの場合、「何も見つかりませんでした」ということはほとんどない。というよりむしろ、ボコボコにされることも少なくないのだ。
「不良債権が数億円あった」というケースはまだいい方で、「株券を担保にしてお金を借りていた」とか「○○銀行からの融資は実はノンバンク(サラ金)からだった」とか「売上高の20%が架空計上だった」などという酷いケースもあった。あまりに酷いケースでは買収そのものを見送ることになるが、そうでなくてもDD実施前と後では、企業価値が下がってしまうケースがほとんどだ。
回収不能な売掛金や不良第子、不動産屋有価証券の評価損など、明らかな減価要因がある場合はやむを得ないが、会計DDについては、税務上の解釈や会計上の評価を保守的(固め)にすることも減価要因になることがある。例えば、ある売掛金が6ヶ月間回収できないでいるような場合、譲渡会社は「分割で回収できる見込みです」と答えても、DD担当者が「これは回収の見込みなしです」と判断すると、その分は減価されてします。買収会社の会計基準や考え方に合わせて評価する必要性を考えるとやむを得ないとも言えるが、そこまで厳しく評価しなくても、と思ったことも少なくない。
以前、DDを依頼していた会計事務所に、異常に細かく調査して、異常に辛い評価をする会計士がいたが、彼のおかげで数件のM&A案件が実行見送りになったことがある。わたしは当時、彼のことを「案件クラッシャー」と呼んでいたのだが、よくよく考えると、リスクを事前にチェックして危険を回避してくれたとも言えるので、今となっては結構感謝している。

■M&Aアドバイザーに必要な資質
どうすればM&Aアドバイザーになれるかというと、実は誰でもなれる。そう言ってしまうとありがたみがなくなってしあうが、資格としての位置づけが無いだけで、M&Aのアドバイザーの職務内容は、非常に多岐にわたった知識や経験、コミュニケーション能力が必要なため「経営コンサルの総合格闘技」のような網羅性が要求される結構ハードな仕事だ。そのため、その知識や経験、実力にはかなりの個人差が有るのも事実である。これはM&Aアドバイザーに要求される知識が、法務、税務、会計等のM&A実行に関する一般的・網羅的知識だけでなく、様々な業種における昇竜構造、業界内の主要プレイヤーに関する知識、業界ごとの収益構造や商慣習といったビジネス知識にまで及ぶこと、更に取り扱った案件数や経験年数、そして前述したとおり、独自のM&A情報ネットワークによって案件の処理能力に大きな差がでるからだ。
従って、同じ「M&Aアドバイザー」であっても千差万別、それまでの職務経験や得意分野、そして個々の能力によって様々なタイプのアドバイザーが存在するので、M&Aアドバイザーを選ぶ時、やはり最終的に大切なのは。自分の考えを理解してくれて一生懸命対応してくれるかどうか、という根本的な「人となり」や「相性」と言える。

■大手のM&Aアドバイザー
一般的に大手企業同士や金額の大きいM&A案件の場合、大手証券会社やメガバンクがM&Aアドバイザーを務める事が多い。元々、M&Aアドバイザリー業務は証券会社の一業務だったこともあって、日本のM&A業界を作り上げてきたのも証券会社出身者である(日本の場合、山一證券のM&A部隊が老舗M&Aアドバイザーとして有名であった)。銀行系では、メガバンクが「企業情報部」等の名称で対応するケースが多かったが、近年では地銀もM&Aアドバイザリー機能をもつようになり、地域密着型サービスとして実績を挙げる事例も出てきている。地銀の場合、顧客サービスの一環として小規模案件にも対応してくれるので、中小企業経営者にとっては使い勝手が良いと言えよう。

GCAサヴィアン(GCA株式会社)
http://www.gcaglobal.co.jp/
東証マザーズに上場しており、独立系のM&Aアドバイザーとして有名。アドバイザー型。

レコフ
http://www.recof.co.jp/
中小企業のM&Aを手掛ける大手かつ老舗。仲介型。

日本M&Aセンター
https://www.nihon-ma.co.jp/
中小企業のM&Aを手掛ける大手かつ老舗、東証一部上場。仲介型。

■中小企業向けM&Aアドバイザー(ブティックファーム)
インターネットで調べても分かる通り、近年、中小企業専門のM&Aアドバイザリー会社(「ブティックファーム」または「ブティック系M&Aアドバイザー」などと呼ばれることが多い)が非常に増えてきているようだ。これは、事業承継問題をはじめておして、中小企業のM&A分野の重要性が増していること、そしてビジネスとして成り立つほどの市場ができつつあることの証左と言える。
ブティックファームは、大手が取り扱わない規模、すなわち中小企業案件をメインターゲットとしているので、案件の規模や報酬額についても状況次第で臨機応変に対応してくれる業者が多いのが特徴だ。

■会計事務所系M&Aアドバイザー
M&Aの実行には会計や税務の検討からスタートするケースが多いため、会計事務所や税理士事務所がM&Aアドバイザリー業務を行っているケースも多い。個人事務所から100名を超える人員を擁する事務所まで、規模や人員などその様態も様々であるが、需要と供給の関係もあってその多くは東京や大阪など大都市を拠点にしており、地方の中小M&A案件への対応には限界がある。
近年ではM&A需要の高まりを受けて、多くの公認会計士事務所や税理士事務所がM&Aアドバイザリー業務を手掛けるようになっているため、地域密着型M&Aアドバイザーも増えているようであるが、実績や経験、そして情報ネットワーク等M&Aアドバイザリー業務に関する力量には差があるので、選定の際には慎重に検討してほしい。

■買収対価を払うのは実は従業員
ところで、「株式譲渡や事業譲渡を行ったとき、譲渡対価を払うのは誰か?」と問われたらどう答えるだろうか。正解は「株式を譲り受けた買収者(買収会社)」である。事業譲渡の場合も同様に、「事業を譲り受けた買収者(買収会社)」が対価を支払っている。1億円の株式を買い取れば、株主に1億円を支払うのは買収者(買収会社)だ。
しかし、ここでよく考えてみると、買収会社はボランティアで1億円を支払うわけではないので、支払った1多く円以上の利益を買収した会社や事業から回収しないといけない。では、買収資金1億円を誰が稼いで買収会社に返済していくかというと、他でもない買収された会社(事業)の従業員なのである。株を譲渡して1億円もらった株主や、事業を譲渡した会社の従業員が稼いで払ってくれる訳ではないのだ。つまり、買収対価は買収した会社がはらっているが、実はそれは買収された会社の従業員が払うことを前提にしているのである。
こうやって考えると、買収された会社の従業員は憤慨しそうだが、M&Aの仕組みは実はこのような従業員の働きによって支えられていると考えることもできる。よく会社を譲渡したいと相談に来る社長が「わたしの会社の社員を守ってあげてください」と5つ、現在の会社の収益力では100年かかっても回収できないような譲渡金額を要求してくることがある。この社長の言葉は、社員を大切にしてほしいと言いつつ「わたしがもらうお金は、社員を100年こき使って回収してください」と言っているように聞こえるのだ。
確かに、ここまで育て上げてきた会社の勝ちを、できるだけ高く評価してほしいという社長の気持ちも分からないでもない。しかし、M&Aによる買収会社の資金回収は、買収した事業によって行われ、その事業を動かしている従業員によって稼ぎ出されているという事実を十分認識した上で交渉をしてほしいと思う。

【おすすめM&A書籍】
■中小企業のためのM&A徹底活用法(分林 安弘)


日本M&Aセンターの創業者である、分林会長の本。中小企業のM&A分野の重鎮だけあって、事例もふんだんに取り入れられて読みやすい。初版から何度かの改訂をしているロングセラーで、M&Aの手順やM&Aアドバイザーの役割など、平易な表現で分かりやすく書いてあり、始めてM&Aをやってみようと思っている方にもお薦めの一冊。

■M&Aの労務ガイドブック(高谷 知佐子)


M&Aを実行する際、従業員に関する対応や労務関連の手続きは結構複雑で、M&Aアドバイザーでも「こういう時はどうしよう」と判断に迷う時が少なくないが、そんな時に頼りになる一冊。事業譲渡の際の従業員の処遇や、雇用契約書の引継ぎ方法、会社分割の際の同意書の取り方など、実務で役に立つ事例も豊富で非常に実践的。M&Aを行う会社の労務担当者や管理担当者にもお薦め。

■M&A実務ハンドブック(鈴木 義行)


M&A実行に関する詳細な解説がされている手引書。M&Aのスキーム解説、法的な手続きやスケジュール、会計や税務に関する考え方や処理方法など、M&Aを実行するにあたっての基本的な留意事項を網羅しており、M&Aアドバイザーだけでなく、M&Aに従事する専門家にとっても役立つ一冊。

■中小企業M&A成功マニュアル(渡部 潔)


事業承継やM&Aを考えている中小企業経営者向け入門書。事例紹介は少ないが、M&Aの手法から手順の解説、M&Aアドバイザーの選び方や株主の税務など、M&Aを実行するにあたって必要な知識を平易な表現で網羅的にカバーしてあるので、始めてM&Aを考えている方にも分かりやすい。各項目を「初級者レベル」「中級者レベル」で分類し、飛ばし読みができるよう工夫されている点も特徴。

■ケースと図解で学ぶ企業価値評価(渡辺 茂)


企業価値評価について解説した入門書。DCF法の考え方の基礎となる「正味現在価値(NPV)」や「リアルオプション」の解説から、ブラック・ショールズ式やモンテカルロDCF等応用的な手法まで幅広く解説してある。中小企業のM&Aについて理解するだけなら、DCF法の解説部分で充分。

■中小企業のための事業承継M&Aの要点総まとめ(小田 満)


中小企業の事業承継を、株式の譲渡(M&A)と税務にフォーカスして解説してある。事業承継を予定している二代目社長などの後継者にとって、知っておいた方がいい相続のテクニックや税務について、ポイントごとに簡易にまとめてあるため、網羅的に課題を整理しておくには有効な一冊。ただし、税制は毎年改正されるので、詳細については税理士に確認する必要あり。

■すらすら図解MBOの仕組み(あると総合事務所)


MBOについて、その仕組や利用法を解説してある。「すらすら図解」とあるように、図や表をふんだんに使用してあるため感覚的に理解しやすい内容といえる。MBOのテクニック解説書なので横文字が多いが、公開買付(TOB)の手順や、MBO関連のファイナンスなど、MBOをする際に必要な知識や擁護は本書でほぼ網羅できる。

■事例でわかる!オーナー経営者のためのM&A活用術(荒井 邦彦)


会計事務所兼M&Aアドバイザリー会社である株式会社ストライク社長の荒井邦彦氏が、その経験を元に中小企業のM&A事例を小説風に紹介した本。6つのケースでM&Aを進めるときのオーナーの心情や利害関係者とのやり取りが臨場感あふれる表現で語られる。「M&Aの本はちょっと苦手」という方におすすめの一冊。

■M&Aコンサルティングの実務(左武 伸)


M&Aアドバイザーの業務にフォーカスしたM&A実行に関する実務解説書。M&Aの実務面に即した実践的内容で、今までありそうでなかった一冊。M&Aを進める上で必要な手続きについて、進行手順に沿って詳細に解説してあるほか、契約書等の雛形も豊富に載っているので、M&Aアドバイザーに興味がある人だけでなく、M&A担当者にとっても利用できる汎用性の高い本と言える。

■実践M&Aハンドブック(服部 暢達)


実務にはあまり触れていないが、M&Aのスキームや同行について事例と統計データを元に解説した本で、学術的・専門的視点からM&Aを研究したい人向き。特にLBOと敵対買収防衛策については、具体的な事例を独自の視点で分析・解説してあり読み応えがある。