【書評】大事なことに集中する(ディープ・ワーク) – 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法(カル・ニューポート)


2017年3月時点において個人的ナンバーワン。
圧倒的に素晴らしい本。
著者のカル・ニューポートは2004年にダートマス大学で学位取得後、2009年にMITで博士課程修了。専攻はコンピュータ・サイエンス。
2011年からジョージタウン大学准教授として教鞭をとりつつ、ブログ「Study Hacks」の執筆も続けている。

第1部では、ディープ・ワークの仮説が真実であることを読者に納得してもらうための様々なデータや実話が紹介されており、第2部では、実際にどうすればディープ・ワークをマスターできるのかについての実践的な方法論の紹介がある。
この、実践方法まで言及している、という部分は私の好みである。

今までの書籍では仕事で充足感を得るためには、その仕事そのものが高尚である必要があるかのような書き方のものが多かった。
しかし、著者によると「高尚な仕事を求める必要はない。高尚な仕事の仕方を求めるべきだ」とある。

一日、または一週間のうちに明確に決められた一定時間をディープ・ワークに打ち込み、残りは他のすべてのための時間にあてることで、生産性を極度にあげることができる。

ディープ・ワークに入るためには、自分にあった儀式を考えてそれに従うことが最短の道である。場所を決め、期限を決め、集中力を図る基準を準備する。インターネットの使用は禁止して、ディープ・ワークのサポートとなるものを準備する(例えば美味しいコーヒーなど)。
明晰な状態の頭脳をキープするために散歩や運動を組み込むことも効果的。
仕事の資料を整理すると行った、環境要素も大事である。

なぜ缶詰めが効果的か?
環境を根本的に変え、邪魔を無くし、それに金銭を投入することで全てがディープ・ワークを後押しすることになる。
金銭の投入はある程度痛みを伴う方が良い。それによって仕事の重要性をいっそう自覚するからだ。
「缶詰め」といえばホテルがすぐに浮かぶが、起業家でソーシャル・メディアのパイオニアのピーター・シャンクマンは、飛行機の座席が一番集中できると考え、アメリカから東京前の往復チケットを予約して、日本への飛行中ずっと原稿を書き、到着するとラウンジでエスプレッソを飲み、それから引き返すということを「繰り返す」ことにより著書を書き終えた。

イノベーションを生むオフィス
世界で最も革新的なMITの科学技術者が望んだものはオープンオフィスではなく、自分の防音研究室に閉じこもれることだった。
ただし、各自の「一人での熟考」ができる場所に加えて「偶然の幸運な出会い」が本当のイノベーションを生み出す。
つまり、ハブアンドスポーク的なオフィス、各自の研究室とそれをつなぐ共有スペースが最高のイノベーションを生み出す場所となる。

4DX
【規律1】最も重要な目標にしぼって実行する
このうえなく切望するものに『イエス』と良い、それに意識を集中して他の全てを締め出す。

【規律2】最重要目標のためのディープ・ワークに注ぐ時間を指標にする
いますぐコントロールできて、長期的な目標にプラスの影響を与えるような行動を向上させることへ目を向けさせる。

【規律3】ディープ・ワークに注いだ時間をスコアボードにつける
「人は成績をつけると行動が変わる」
積み重ねたディープ・ワーク時間を目に見える結果にする。
めざす結果ごとに、必要なディープ・ワーク時間の予測を立てる。

【規律4】スコアを定期的にチェックしてリズムをつくる
最重要目標を持つチームのミーティングを定期的に、頻繁におこない、リズムを作る。

あえて退屈な時間をすごす
一時的に退屈することを覚悟し、その間自分の思考だけを頼りに戦う。
単に待ち、退屈することは集中力の訓練になる。

はっきり断るが、断る理由は曖昧にする
依頼者が打開できそうな弁解をしないことが、シャローワークを断るコツのひとつ。
詳細を話たくなる衝動を抑え、はっきりとした拒絶を見せることが一番。

学者的なメールの仕分け方
次のうちひとつでも当てはまったら返信不要。
・内容があいまい
・妥当な返事をすることが難しい
・興味を引く質問、提案ではない
・返事をしても本当に良いことが起こらない上に、返事をしなくても本当に悪いことがおこらない。

■ディープ・ワーク(DEEP WORK)
あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。
こうした努力は、新たな価値を生み、スキルを向上させ、容易に真似ることができない。

ディープ・ワーク(DEEP WORK)とは著者の造語であり、著者の言葉を借りると上記の定義となる。

■シャロー・ワーク(Shallow Work)あまり知的思考を必要としない、補助的な仕事で、注意散漫な状態でなされることが多い。
こうした作業はあまり新しい価値を生み出さず、誰にでも容易に再現することができる。
また、ディープ・ワーク(DEEP WORK)と対を成すものとして常に注意力散漫の状態で職務を行うこと、これをシャロー・ワーク(Shallow Work)という。
こちらも同じく著者の造語である。

「隠れ家では、私一人きりだ」
「鍵はいつも私が持っていて、誰も許可なしには入れない」
「このタワーで得た安らぎと一家得るような気持ちは最初から強烈だった」

精神分析医カール・ユングはスイスのチューリヒ湖北岸近くにボリンゲンという村がある隠れ家「タワー」を建築した。
インドでの、自宅に瞑想部屋をつくるならわしに習い隠れ家内に専用オフィスを設けた。
午前7時に起床、朝食をたっぷり摂ったあと2時間執筆に没頭した。
午後は瞑想か田舎を長時間散歩した。
「タワー」には電気が引かれておらず、夜になると石油ランプで明かりを、暖炉で暖かさを得た。
そして、午後10時には床についた。

「注意力の光線を一点に集めて、あなたの心をレンズにせよ。あなたの精神を、何であれあなたの心の中の、有力で夢中にさせるアイデアに全面的に集中させよ」

修道士で倫理学准教授、アントニン – ダルマス・セルティランジュの「知的生活(The Intellectual Life)」からの引用。
「何かを習得するには極度の集中が必要だ」ということを指摘した一文であり、この著書は1920年代に書かれている。
そして、これは行動心理学のK・アンダース・エリクソンによる「意図的な練習(Deliberate Practice)」と続いていく。

マルチタスクは生産性を落とす。

著者の研究によると、国内で最も競争の激しい大学で最高の成績を収めている学生の勉強時間は、GPAで彼らを下回る学生たちより勉強時間が少なかったそうだ。