【書評】M&A実務ハンドブック(第7版)(鈴木義行 編著)


【編著者紹介】
鈴木義行
公認会計士。M&Aを活用した事業承継や事業再編に関する著書を複数持つ。

【著者紹介】
安井淳一郎(やすいじゅんいちろう)
1968年生まれ、愛知県出身の公認会計士。1990年中央大学商学部会計学科卒業。株式会社ヴィーナスファンド代表取締役、及びボウリング場の運営を行う株式会社スポルト代表取締役。
父の安井善宏は明治電機工業株式会社の元会長。

株式会社スポルト
http://www.sport-bowling.co.jp/

株式会社ヴィーナスファンド
http://www.venus-fund.co.jp/

越智多佳子(おちたかこ)
公認会計士。越智公認会計士事務所代表。

岡田昌也(おかだまさや)
公認会計士。太陽有限責任監査法人パートナー。
南山大学大学院ビジネス研究科ビジネス専攻准教授

太陽有限責任監査法人(太陽グラントソントン)
http://www.grantthornton.jp/

【書評】
内容はM&Aの実務全域に及び500ページを越える分厚い本だが、非常に読みやすい。図解はスッキリと分かりやすく、それでいて内容に抜けと重複も無く(目次名は少し重複しているが)内容がスーッと頭に入ってくる。全体の構成、及び文章自体も分かりやすい。書類のサンプルもあり、項目ごとの関連案件データもあり、M&Aに関わる人には必携の一冊と言える。表紙の威圧感と本の分厚さから、購入はしていたものの実際に読むのが後回しになっていたが、これはまず最初の一冊としても非常にいいと思う。

内容(文章と文章量)はこれ以上簡単にできないぐらい推敲されているように感じるので、例えば3冊分割にして一冊あたりの分量を少なくし、その上で表紙をポップにして、「はじめての~」などと題名に入れるとバカ売れすると思う。

【目次】
第一章 M&Aで何を目指すか
M&Aとは
 M&Aの意義
 M&Aの手法
 ・合併
 ・株式取得
 ・事業資産の取得
 ・提携

M&Aの目的
 売り手側の目的
 ・資源の集中
 ・事業承継対策、創業者利潤の確保
 ・経営不振に陥った会社の救済

 買い手側の目的
 ・新規事業の開拓
 ・シナジー効果の追求
 ・スケールメリットの追及
 ・地域戦略
 ・業界再編成
 ・優秀な人材の確保

第二章 M&Aの進め方
標準的なスケジュール
手続きの流れ
 M&Aの出発点(ニーズの発生)
 相手探し(買い手にとっては機会の発見)
 秘密保持契約の締結
 ・秘密保持契約書の記載内容
 ・秘密保持契約書のサンプル

 基本情報の開示(交換) 基本条件のオファー、交渉
 ・買い手に寄る初期敵分析
 ・案件概要書
 ・基本条件の提示
 ・スキーム選択におけるポイント

 基本合意書の締結
 ・合意した基本条件
 ・独占的交渉権
 ・デュー・デリジェンスの実施
 ・善管注意義務
 ・法的拘束力の有無
 ・基本合意書のサンプル

デュー・デリジェンス
 ・デュー・デリジェンスの目的
 ・デュー・デリジェンスの観点
 ・デュー・デリジェンスの実施計画
 ・デュー・デリジェンスの調査手続例

 最終契約書の締結、クロージング
 ・デュー・デリジェンスの結果の反映
 ・条件の確定
 ・最終契約書のサンプル
 ・第三者による評価
 ・クロージングにおける論点
 
その他のポイント
 解約、損害賠償
 M&Aに関する専門家と費用
 ・アドバイザー
 ・弁護士
 ・会計事務所
 ・公開買付代理人
 ・第三者評価人
 ・その他の専門家

M&A後の統合(PMI、ポスト・マージャー・インテグレーション)
 ・関係者への説明
 ・統合の推進

第三章 M&Aにおける価格付け・企業価値評価
企業価値評価の意義
 価格の決定
 評価の対象
 評価の手法

将来収益に基づく評価(インカム・アプローチ)
 概説
 DCF法
 ・利益 vs キャッシュフロー
 ・フリーキャッシュフロー
 ・計算モデル
 ・割引率
 ・エクイティDCF

市場価格に基づく評価(マーケット・アプローチ)
 市場価格法
 類似会社批准法

時価純資産に基づく評価(ストック・アプローチ)
 再調達原価法
 清算価値法

評価結果の解釈と適用
 概説
 価値と価格
 ・シナジー効果
 ・主観的価値
 ・コントロールプレミアム
 ・コントロールプレミアムに関する実績データ
 ・合併の場合のコントロールプレミアム
 
 評価結果の統合方法に関する試案

第四章 M&Aのスキームと実施手続(法務)
株式取得によるM&A
 株式取得の意義
 ・子会社株式の譲渡
 ・株式譲渡制限
 ・相互保有株式の議決権の停止

 株式取得の方法
 ・大株主からの株式譲受
 ・株式市場での株式買付け
 ・株式公開買付け(TOB)
 ・第三者割当による株式発行
 ・新株予約権

株式交換、株式移転
 株式交換および株式移転制度の意義
 持株会社制度の概要
 ・持株会社制度とは
 ・持株会社の設立方法

 簡易株式交換制度
 略式株式交換制度
 株式交換および株式移転に関する会社法上の規則
 ・株式交換、株式移転のスケジュール
 ・株式交換契約書、株式移転計画書の記載事項
 ・事前事後開示書類の記載内容
 ・株式交換により増加する資本金、資本準備金等
 ・株式移転により新設する会社の資本金、資本準備金等
 ・三角株式交換
 ・株券提出手続

事業譲渡
 事業譲渡の意義
 事業譲渡の形態
 事業譲渡に関する法的規制
 ・会社法の規制
 ・事業譲渡の手続
 ・事業譲渡契約書
 ・簡易事業譲渡等
 ・略式事業譲渡
 ・事業譲渡と合併との相違

合併
 合併の意義
 合併の形態
 簡易合併制度
 略式合併制度
 三角合併
 ・三角合併の手続
 ・親会社株式の取得方法
 
 会社の種類別合併の可否
 合併に関する会社法上の規制
 ・合併スケジュール
 ・合併契約書の記載事項
 ・事前事後開示書類の記載内容
 ・公告
 ・吸収合併により増加する資本金、資本準備金等
 ・株券提出手続

会社分割
 会社分割の定義
 会社分割のパターン

 ・新設分割(パターンA)
 ・吸収分割(パターンB)

 労働契約の承継
 簡易分割制度
 略式分割制度
 会社分割に関する会社法上の規制

 ・会社分割スケジュール
 ・分割契約書、分割計画書の記載事項
 ・事前事後開示書類の記載内容
 ・分割後の資本金、資本準備金等
 ・新設分割により設立する会社の資本金、資本準備金等
 ・三角吸収合併

各スキームに共通する会社法上の規制
 条文の体型
 M&A手続の流れ

 ・M&Aに必要とされる手続
 ・手法別の比較表

 事前開示手続
 ・事前開示する書類
 ・債務の履行に関する開示について
 ・事前開示書類を開示する期間
 ・事前開示書類を閲覧請求できる者

 事後開示手続
 ・事後開示する書類
 ・開示する期間
 ・閲覧請求できる者

 株主保護手続
 ・反対株主が買取請求できるか否か
 ・買取請求をできる反対株主の範囲
 ・株主への通知

 債権者保護手続
 ・公告事項
 ・意義申述できる債権者の範囲

 株主総会の承認決議要件
 ・株主総会の決議の種類
 ・各種法別の決議要件
 
 簡易組織再編の手続
 ・存続会社等の簡易手続要件(合併存続会社、会社分割承継会社、株式交換完全親会社)
 ・消滅会社等の簡易手続要件(新設分割分割会社、吸収分割分割会社)
 ・簡易手続が認められるケース

 略式組織再編の手続
 ・略式組織再編の対象となる子会社
 ・各手法別の要件
 ・差止請求権

第五章 M&Aのスキームと手続(会計)
M&Aと企業結合会計
 企業結合会計基準の変遷
 M&Aに関する2つの会計基準の相関

 ・種類
 ・2つの会計基準の提供対象の相関

 M&Aに関する2つの会計基準の基本概念
 ・用語の定義
 ・2つの会計基準の共通概念
 ・企業結合会計基準の基本概念
 ・2つの会計基準の非対称性

 企業結合会計基準の内容
 ・取得の会計処理
 ・共通支配下の取引等の会計処理
 ・共同支配企業の形成

 事業分離会計基準の内容
 ・取得の会計処理
 ・共通支配下の取引等の会計処理
 ・共同支配企業の形成
 
 事業分離会計基準の内容
 ・基本的な会計処理(受取対価が株式のみ)
 ・分離元企業の会計処理(個別財務諸表上の取扱い)
 ・被結合企業の株主の会計処理(個別財務諸表上の取扱い)
 ・結合企業の株主の会計処理(個別財務諸表上の取扱い)

 のれんの会計処理
 ・概要
 ・のれんの償却方法
 ・負の「のれん」の留意点
 ・その他の留意点

各スキームの会計
 株式交換

 ・企業結合会計と事業分離会計の適用対象
 ・完全親会社の会計処理
 ・逆取得となる株式交換の会計処理
 ・増加資本金の会計処理
 ・共通支配下の取引等の会計処理(親会社が子会社を完全子会社とする場合)

 株式移転
 ・企業結合会計と事業分離会計の適用対象
 ・子会社株式の取得原価の算定
 ・増加資本金の会計処理

 合併
 ・企業結合会計と事業分離会計の適用対象
 ・吸収合併消滅会社の最終事業年度の会計処理
 ・逆取得となる吸収合併の会計処理
 ・増加資本金の会計処理(パーチェス法の場合)
 ・共通支配下の取引等の会計処理

 会社分割
 ・企業結合会計と事業分離会計の適用対象
 ・逆取得となる会社分割の会計処理
 ・増加資本金の会計処理(パーチェス法の場合)
 ・共通支配下の取引等の会計処理

IFRSの導入と影響
 会計基準の統一化への動き

 ・統一化への流れ
 ・IFRSが日本に与える影響

 IFRSへの対応
 ・原則主義への対応
 ・今後の動き

 企業結合会計への影響
 ・日本の企業結合会計の変遷
 ・今後の企業結合会計の動き

第六章 M&Aのスキームと手続(税務)
株式取得によるM&A
 譲渡人の税務

 ・個人の税務(株式譲渡益=キャピタルゲイン課税)
 ・法人の税務(株式譲渡益の益金算入)
 ・TOBに応じた株主の課税関係
 ・譲渡人が非居住者である場合の税務

 譲受人の税務
 ・個人の税務(株式の取得価額)
 ・法人の税務(株式の取得価額)
 
 税務上の時価と低廉譲渡
 ・法人税法および所得税法上の譲渡時価
 ・低廉譲渡に対する税務

 有利発行に関する税務

適格組織再編税制
 適格要件の概要
 合併
 会社分割
 株式交換
 株式移転
 無対価による組織再編について
 事業関連性要件について

グループ法人税制
 意義
 概要

 ・対象となるグループ会社
 ・対象となる取引
 ・適格現物分配

 M&Aへの影響

株式交換および株式移転
 税務の取扱い

 ・概要
 ・適格要件の留意事項

 非適格株式交換等の場合の取扱い
 ・株式交換等の効力発生日の時価評価
 ・評価対象となった資産の減価償却費
 ・繰越欠損金の取扱い
 ・受け入れた完全子会社の取得価額

 株主の税務
 ・完全子会社の株主の税務
 ・完全親会社の株主

事業譲渡
 一般的な事業譲渡における取扱い

 ・事業法人の税務(譲渡益に対する課税)
 ・譲受法人の税務(譲受資産の受入価額)
 ・共通の税務(譲渡法人の従業員が譲受法人に出向、転籍した場合の取扱い)

 適格現物出資の取扱い
 ・要説
 ・一定の要件を満たす現物出資(適格現物出資)

合併
 合併に関する税務の概要
 合併法人の税務

 ・合併差益
 ・抱合株式
 ・被合併法人が合併法人の株式を有している場合
 ・被合併法人の償却超過額等の否認金等
 ・受入減価償却資産の耐用年数
 ・被合併法人の未納法人税等
 ・被合併法人の繰越欠損金の引継ぎ
 ・合併法人の繰越欠損金の制限
 ・合併の日 

 被合併法人の税務
 ・清算所得の規定の廃止
 ・被合併法人の役員に対する退職給与の損金算入
 
 被合併法人の法人株主および個人株主の税務
 ・みなし配当の取扱い
 ・譲渡損益の取扱い
 ・取得新株の取得価額の取扱い

 合併法人の個人株主の税務
 三角合併の取扱い

 ・適格要件の取扱い
 ・取得した親会社株式を交付する場合の評価損益課税
 ・被合併法人の税務の取扱い

会社分割
 概要
 資産移転等に伴う譲渡損益の取扱い
 法人、個人共通の税務

その他の税務
 のれんの政務

 ・概要
 ・正ののれん
 ・負ののれん

 子会社整理損
 ・概要
 ・税務上の取扱い(経済的合理性の有無の判断基準)
 
 退職金の税務
 ・役員退職金の法人税法上の取扱い
 ・過大な役員退職給与の損金不算入
 ・受け取った退職金の課税関係(個人)

 連結納税制度
 投資ファンドの税務(二重課税の回避)

 ・投資事業有限責任組合の概要
 ・匿名組合の概要
 ・投資事業有限責任組合と匿名組合の税務上の相違点

 受取配当益金不算入
 ・国内子会社の場合
 ・外国子会社の場合

 特定株主等によって支配された法人の欠損金等の損金算入制限
 ・対象となる法人(欠損等法人)
 ・対象となる事業内容の変更等
 ・事業規模の判定

 M&Aにおける間接税
 ・登録免許税
 ・不動産取得税
 ・消費税

M&Aにおける消費税
 消費税の概要
 株式交換等に関する消費税法の取扱い
 株式譲渡に関する消費税法の取扱い
 合併における消費税法の取扱い

 ・合併により引き継いだ資産の課税関係
 ・合併があった場合の納税義務の免除の特例

 事業譲渡における消費税法の取扱い
 会社分割における消費税法の取扱い

 ・新設分割等
 ・吸収分割

第七章 スキームの決定と関連事項
スキーム選択におけるポイント
M&Aと資金調達(LBO)
 資金調達が必要となる局面

 LBOとは
 レバレッジとは
 LBOの手順
 ・SPC(特別目的会社)の設立
 ・自己資金の拠出と金融機関等からの借入
 ・子会社化
 ・吸収合併
 ・計算例

M&Aと上場関係規則
 適時開示に関する規制

 ・M&Aに関する情報の開示
 ・開示情報の取引所への事前説明
 ・開示の方法
 ・会社情報にかかる照会事項の報告および開示
 ・開示内容の変更、訂正
 ・開示注意銘柄の指定、指定解除
 ・決定事項にかかる通知、書類の提出
 ・適時開示事例

 上場審査
 ・合併
 ・株式交換、株式移転
 ・会社分割
 ・子会社化、非子会社化、事業の譲受け、事業の譲渡
 
 上場廃止に関する規制
 ・不適当な合併等
 ・不適当な合併等に該当しない場合(上場会社が実質的に存続会社の場合)

M&A後の株式売却
 株式の売出し
 ブロックトレード
 立会外分売制度
 課税関係
 その他の開示義務、取引規制

M&Aと詐害行為等否認リスク
 詐害行為と否認権
 詐害行為に対する否認権の概要

 ・詐害行為全般を対象とした否認権
 ・特定の行為を対象とした否認権
 ・適正価額譲渡の否認
 ・否認の効果
 ・否認権行使の期間

 否認リスクの回避
 ・支払不能状態に関する認識
 ・適正価額の照明
 ・否認権行使の期間

その他の論点
 自社株を対価とする株式公開買付け(エクスチェンジ・テンダー・オファー)
 スクイーズアウト

第八章 M&Aと経営戦略
敵対的買収と買収防衛策
 敵対的買収とは
 買収防衛策の類型
 敵対的買収の事例

 ・近年の敵対的買収事例
 ・判例

 買収防衛策に関する当局の対応等
 ・平成17年5月公表「買収防衛策に関する指針」
 ・平成20年6月公表「買収防衛策の在り方」
 ・東京証券取引所の対応

 敵対的買収防衛策の制度化
 ・事前警告型ライツプラン
 ・設例

 買収防衛策の課税関係

MBO(マネジメント・バイアウト)
 概要

 ・MBOの目的
 ・MBOのスキーム
 
 MBOに関する規制
 ・公開買付け(TOB)における規制
 ・経産省によるMBOに関する指針

事業承継とM&A
 事業承継におけるM&Aの役割
 親族に後継者がいる場合といない場合におけるM&Aの有効性
 M&Aの方法と事業承継における活用内容

事業再生とM&A
 事業再生(再生型倒産処理)におけるM&Aの活用
 事業再生スキーム
 法的整理による事業再生

 ・法的整理のメリット、デメリット
 ・民事再生手続と会社更生手続の比較
 ・プレパッケージ型手続

 私的整理による事業再生
 ・私的整理のメリット、デメリット
 ・私的整理ガイドライン
 ・公的機関が主導する私的整理

 再生会社の税務問題(債権放棄額の損金算入)

M&Aと独占禁止法
 独占禁止法の概要
 平成年改正概要
 M&Aに関する独占禁止法上の規制

 ・規制の対象となる取引等
 ・公正取引委員会への事前届出基準
 
 違反行為に対する措置
 ・排除措置命令
 ・課徴金納付命令